伊藤美誠:「大魔王」現る。卓球王国・中国が本気で恐れる20歳のエース―東京五輪アスリートの肖像(8)
7/12(月) 15:02配信
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nippon.com
松原 孝臣
全日本卓球選手権、女子シングルス決勝でサービスに臨む伊藤美誠(2021年01月17日 大坂・丸善インテックアリーナ)時事
1988年以来長く続く、五輪における中国の牙城を脅かす存在がついに現れた。20歳の伊藤美誠(みま)である。生まれる前から卓球選手となることを運命づけられ、幼い頃からの過剰とも言える練習を軽やかに乗り越えてきた。東京五輪で日本卓球界初の金メダルを目指す日本のエースの強さの根源とは。
中国の高く厚い壁が破られるのか
リオ五輪では女子団体で銅メダルを獲得。福原愛(左)、石川佳純(中)とともに笑顔を見せた(2016年8月16日 ブラジル・リオデジャネイロ)時事
オリンピックには、圧倒的な強さを誇る国が存在する競技がある。その一つが卓球だ。
1988年ソウル大会で正式種目となってから、中国は個人・団体種目合わせて男女計32個の金メダルのうち28個を獲得。特に女子はシングルス、団体戦ですべて優勝と揺るぎない強さを誇ってきたが、東京五輪で、その強さに終止符が打たれる可能性が出てきた。
高い壁を打ち破ろうとしているのは、20歳の伊藤美誠だ。
伊藤の名前が、卓球界にとどまらず国内外に広く知られたのは2014年のこと。3月30日、ドイツ・オープンのダブルスで、ワールドツアーでは史上最年少の記録となる13歳で優勝すると、翌週4月6日のスペイン・オープンで2週連続優勝。そのインパクトは大きく、海外でも大きく報道された。
16年にはリオデジャネイロ五輪の団体戦に出場。シンガポールを相手にした3位決定戦では、第4試合で世界ランク4位の馮天薇(フォン・ティエンウェイ)をストレートで破り、日本の銅メダル獲得を決めた。このとき15歳と300日、卓球では史上最年少のメダリストとなった。
18年11月の国際大会では、中国のトップ選手3人を破り優勝。国際卓球連盟が1年間で最も活躍した選手に贈る「スターアワード」にノミネートされ、同年の世界選手権MVPとして特別表彰された。その活躍は中国でも大きな反響を呼び、「大魔王」と記すメディアもあった。
強気なプレースタイルと巧みなラケット操作から生み出す多彩な技が持ち味。相手のスマッシュをコンパクトなテイクバックから打ち返すカウンターは「みまパンチ」の異名を持つ。ラケットの両面に異なる性質のラバーを張り、バックハンドから「チキータ」と呼ばれる攻撃的なレシーブや逆回転の「逆チキータ」を繰り出す。サーブは、高さや長さ、回転、コースとも種類が豊富だ。
中国はいま、伊藤をはっきり脅威と捉えている。中国の代表クラスは伊藤のプレースタイルに近い選手を「仮想敵」と設定し、練習相手とするなどの対策を講じている。
東京五輪が近づいても伊藤は進化を続け、しばしば中国の強豪選手に勝利を収めて、20年4月の世界ランキングでは男女を通じて日本勢最高位の2位に浮上した。世界の卓球史を塗り替えることができる実力と可能性を秘め、本番を迎えようとしている。
7/12(月) 15:02配信
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松原 孝臣
全日本卓球選手権、女子シングルス決勝でサービスに臨む伊藤美誠(2021年01月17日 大坂・丸善インテックアリーナ)時事
1988年以来長く続く、五輪における中国の牙城を脅かす存在がついに現れた。20歳の伊藤美誠(みま)である。生まれる前から卓球選手となることを運命づけられ、幼い頃からの過剰とも言える練習を軽やかに乗り越えてきた。東京五輪で日本卓球界初の金メダルを目指す日本のエースの強さの根源とは。
中国の高く厚い壁が破られるのか
リオ五輪では女子団体で銅メダルを獲得。福原愛(左)、石川佳純(中)とともに笑顔を見せた(2016年8月16日 ブラジル・リオデジャネイロ)時事
オリンピックには、圧倒的な強さを誇る国が存在する競技がある。その一つが卓球だ。
1988年ソウル大会で正式種目となってから、中国は個人・団体種目合わせて男女計32個の金メダルのうち28個を獲得。特に女子はシングルス、団体戦ですべて優勝と揺るぎない強さを誇ってきたが、東京五輪で、その強さに終止符が打たれる可能性が出てきた。
高い壁を打ち破ろうとしているのは、20歳の伊藤美誠だ。
伊藤の名前が、卓球界にとどまらず国内外に広く知られたのは2014年のこと。3月30日、ドイツ・オープンのダブルスで、ワールドツアーでは史上最年少の記録となる13歳で優勝すると、翌週4月6日のスペイン・オープンで2週連続優勝。そのインパクトは大きく、海外でも大きく報道された。
16年にはリオデジャネイロ五輪の団体戦に出場。シンガポールを相手にした3位決定戦では、第4試合で世界ランク4位の馮天薇(フォン・ティエンウェイ)をストレートで破り、日本の銅メダル獲得を決めた。このとき15歳と300日、卓球では史上最年少のメダリストとなった。
18年11月の国際大会では、中国のトップ選手3人を破り優勝。国際卓球連盟が1年間で最も活躍した選手に贈る「スターアワード」にノミネートされ、同年の世界選手権MVPとして特別表彰された。その活躍は中国でも大きな反響を呼び、「大魔王」と記すメディアもあった。
強気なプレースタイルと巧みなラケット操作から生み出す多彩な技が持ち味。相手のスマッシュをコンパクトなテイクバックから打ち返すカウンターは「みまパンチ」の異名を持つ。ラケットの両面に異なる性質のラバーを張り、バックハンドから「チキータ」と呼ばれる攻撃的なレシーブや逆回転の「逆チキータ」を繰り出す。サーブは、高さや長さ、回転、コースとも種類が豊富だ。
中国はいま、伊藤をはっきり脅威と捉えている。中国の代表クラスは伊藤のプレースタイルに近い選手を「仮想敵」と設定し、練習相手とするなどの対策を講じている。
東京五輪が近づいても伊藤は進化を続け、しばしば中国の強豪選手に勝利を収めて、20年4月の世界ランキングでは男女を通じて日本勢最高位の2位に浮上した。世界の卓球史を塗り替えることができる実力と可能性を秘め、本番を迎えようとしている。